お手軽起業がもたらすもの

最近、ネットを中心とした新たな起業が盛んだ。

 

若い世代には受け入れられやすい、ネットを利用した、「使いやすい」「カジュアル」なシステム。

 

起業者側からすると、実店舗や人件費などのイニシャルコストを掛けず、金儲けが可能なシステムを、以前より容易に構築できるようになった。

 

利用する側も、される側も、ノリは軽い。下手をすると、学生のサークル活動の延長のような勢いで、起業し、利用する側も深く考えずに、パッと飛び付いているように思える。

 

僕らの時代でいう、「キャッシング問題」に近い。

 

両者ともに、充実感や働き甲斐などという、古くさい価値観とは無縁だ。

 

お手軽に、お金が稼げるとのイメージから、起業してみたものの、どんなマーケティングをしていたのか、予想外の展開に、わりとあっさり廃業、一頃よく言われた「リセットボタン」を押すかのように、倒産して負債だけが残る。

 

場合によっては負債を返すこともせず、債権整理を法的に処理することにも、頓着がないように思える。

 

不景気な時代に育ち、親や社会を見て、地道に働いても豊かになれない、なおかつ、面倒、イヤな仕事にはつきたくないとの思いもあるのだろう。

 

実際に私の従事するインフラ産業も、労働環境は確かにキツい。

 

休日夜間問わずの呼び出しはあるし、悪天候時にはむしろ外仕事が多く、地震や雪害など災害時の対応もある。

 

過去には何日も徹夜で働いたこともあるし、東日本大震災では、一週間風呂に入れなかった。

 

でも、その時の光景は忘れられない。言葉にできない痛ましい景色。同じ日本とは思えなかった。

 

そんななかでも、被災地の方たちから、「遠くから来てくれてありがとう」の感謝の言葉に涙が出そうになった。

 

家に帰った時の、下の子からもらった「無事に帰ってきてくれてありがと!」と書かれた手紙は今も大事に保管してある。

 

仕事には貴賤はないとよく言われる。その通りだと思うが、職業の選択にあまりにも偏りがあると、社会が機能しなくなるのではないかと思う。

 

そういった仕事への求心力低下が招くのは、実社会システム自体の崩壊。

リアルな世界でお金を稼ぐ人間が減ることにより、仮想空間での仕事も成り立たなくなる。

 

少なくとも、私の子供たちには、しっかりと地道に働いてお金を稼ぐ人間になってもらいたい。

 

偉そうに語ってしまいました。

何でも否定するだけはよくないとは分かっています。

 

古い世代の、しかも恵まれた環境にいるものの独り言と聞き流してしてください。

 

 今年新たに始まった事業が、新たな産業の勃興の兆しなのか、日本という国の終わりの始まりなのかは、何十年後に明らかとなるでしょう。

(言い過ぎ、、、)